※ ラグスコが致しているだけ。18歳未満の方(高校生含む)はご遠慮ください。


口づけの熱(所有印)


右脚につけたベルトが、カチャリと音を立てた。ジャケットはベッドサイドに既に放り投げられていて、むき出しの腕が身じろぐたびにシーツを擦る。ガーデンの洗いざらしのシーツとは違う、上等なものだ。
脱がせるには面倒な服を着ているはずだけれど、それすら楽しそうに上に乗っかる男は笑みを崩さない。
「……んっ」
合間に触れるだけの口づけをあちこちに残していく。額の傷に、目じりに、耳元に、頬に、首筋をなぞって、軽く鎖骨に歯が立てられた。漏らすつもりのなかった声が小さく部屋に響き、息を飲む。
喉の奥で笑ったような声が聞こえて、思わず睨みつけた。
ラグナは誤魔化すようにへらりと笑みを浮かべ、グリーヴァを繋いでいるチェーンを指に絡める。位置をずらして、その先どうするのかと目で追っていたのに、また額の傷を舐められて頭がベッドに沈む。
定着して治りようのない傷跡。触れられても痛くはないが、落ち着かない。
「……ッ、しつ、こいっ」
「んー?」
ちゅ、ちゅく、と水音が立てられる。指先で鎖骨をなぞられて、無意識の内に背中が反りベッドから浮いた。
熱い掌が差し込まれる。背骨を辿って、脇腹を撫で、インナーをずらす。むき出しになった腹が外気に触れて、肌が泡立った。
カチャリとまた、右脚で音がする。
顎を引いて視線をやれば、最後のベルトに左手が伸びていた。器用なことだ。
「スコール」
名前を呼ぶ声に混じる金属音。これで脚を締め付けるものはなくなった。一つずつ、身を守る物を奪われていくこの過程が好きになれない。
金具をもてあそびながら、ラグナがにやりと口の端を釣り上げる。ろくでもないことを考えている顔だと、思ったのだ。けれど身構えるより先に、ラグナが口を開く。
「縛ってやろうか?」
「………なに言ってるんだ、アンタ」
「ん〜?だってスコール、ベルトいっぱいつけてるからさ、縛られるの好きなのかと思って」
「服の趣味をそういうものに結び付けるな」
帰ろうかと本気で思うが、上手く体重をかけて乗られているせいで、少し動いたくらいではスプリングを軋ませることしかできない。
「例えばさぁ。こうやって、」
ラグナの大きな手が伸びて、顔の横に置いていた俺の手を取る。ひとまとめにして、頭上へ。
「縛って、俺の髪とか、背中とか、掴めないようにして、抵抗できないスコールを可愛がってやるんだけどなぁ?」
掴まれた手首が熱い。じわりと熱が上がって、視界が揺らぐ。
「スコール」
耳、真っ赤。吹き込まれた声に背筋が震える。
「縛ろうか」
まるで操られているかのように、頷くことしかできない。



「ひっ……あっ、あっ! ラグ、もっ無理、だ…!」
インナーもパンツも下着も何もかも、脱がされて、身に着けているのはグリーヴァだけ。グローブの代わりに手首にはタオルが巻かれ、その上から、侵入者捕縛用に常備されている縄で縛られた。
親指にも縄をかける、ガルバディア軍人の手法。演習で一度縛られたことがあるが、抜け出すには関節を外さなければならない。それでも、抜け出そうと思えばできないことはない。
「ひっ!あっあ、んっ!」
鼻にかかった声がうるさい。こんな声を聞かせるつもりなんてなくて、押し殺したいのにシーツに顔を埋めることも、爪を立てて耐えることも、腕を噛むこともできない。
ふるふると頭を振るけれど、髪が腕に当たるだけで、酸素の足りない脳がぐらりと揺れた。
「気持ちいい?」
吐息が乳首にあたる。それだけで息が詰まった。肉厚な舌が伸びて、もう少しで触れそうなのに、脇腹を手で撫でるだけでそれ以上近づかない。もどかしくて、強請るように背中を反らした。
「らぐぅ……んっ、あ!」
「ははっ。や〜らしぃ」
ご褒美、と笑われて、望んだ刺激よりも強い痛みが与えられる。心臓に近い方を噛まれて、反対側は指で押し込まれる。じゅ、と音がする程強く吸われる度、爪を立てた後頂上を絶妙な速度で撫でられる度、声が漏れる。
「も、ラグナぁっ」
「ん?反対も欲しいのか?」
絶対にわかっているはずなのに、下肢には戯れに触れるだけで直接的な刺激はほとんど与えられない。くすぐるように先走りを漏らす竿を撫でられて腰が跳ねたのに、気づかないはずがないのに。
「こっちも、な」
長い髪を耳にかけて、熱い咥内に先ほどまで指だけの愛撫を受けていた方の胸が、含まれる。噛まれるかと身構えていたのに、チロチロと先端を舐められて、もどかしさに腰が揺れてしまう。ラグナが喉で笑う振動が、俺の快感になった。
濡れた左の乳首が風に当たって冷やされる。先ほどまであんなに熱かったのに、この温度差を上手く処理できない。宥めるように指が触れて、滑る先端を何度も摘まんでは離され、周囲を優しく撫でられる。
「やっ、あ、あ、あ、もっ……むり、むり、だから…っ」
恥も外聞もなく泣きついた。一度も解放を許されていないせいで本当に苦しい。普段なら噛み殺せる声が響くのにも耐えられない。涙が眦を伝い、シーツに染み込んだ。
「いいこだから、もうちょっと、我慢な」
楽しそうに笑うラグナに、口元を舐められる。溢れた唾液が吸われる音がした。そのまま舌がもぐりこんできて、歯列をなぞる。奥へと逃げた舌はあっさりとラグナの舌に絡め取られた。
ぎゅ、と目を瞑る。縛られた手ではいつものようにシーツを握り締められない。耐え切れないと、ラグナの髪を引くことも、背に縋りつくことも、何もできない。だからラグナは好きなように俺を焦らして、遊ぶ。
今は手だけだけれど、これで脚を縛られたら、身体にも縄をかけられたら、椅子やベッドの端に縛り付けられたら。
「……はっ、スコール。良さそうだな?」
「んぶっ、あ、はっ。うん、いい、いいから、もっ……らぐっ」
離れた唇から銀の糸が引いている。口元をぬぐう指。外されることのない指輪に目を瞑って、瞼に落とされるキスを待った。好きにして欲しい。絶対に帰ってきてくれるなら、置物のように縛って置いておいてくれてもいい。そんな、馬鹿みたいなことを考えた。
ぐい、と太腿が持ち上げられる。べたべたになっている後ろのすぼまりに指が触れる。探るように入口を撫で、浅いところに侵入し抜き差しされる。ぬぷっ、と卑猥な音がした。
深く息を吐いて、力を抜く。それなのにラグナは先へ進んではくれず、太腿の内側にキスを落とすばかり。
「らぐっ、らぐなぁ・・・!」
 もうほとんど、泣いていた。
「ひっ、うんっ! も、はやくっ」
焦れた腰が、強請るようにぐねぐねと動く。獲物を前にした猛禽類のように、ラグナの瞳が暗がりで光を放った。
「欲しい?」
がくがくと頷く。これ以上醜態を晒す前に、欲しかった。
かわいい、と何度目かのキスが落とされ、ようやく指が一本、挿れられる。オイルをつけたのだろう。ぬるりと抵抗なく内壁を進んでいく。先ほどよりはマシだけれど、欲しいところには届かない。知り尽くしているはずの内部を、確かめるように、遊ぶようにぐりぐりと押したかと思うと、ゆっくりとした速度でちゅぷちゅぷと出し入れする。
足りないと、言っているのに。
「あーっ! あ、あぁっ、んぅ」
飲み込みきれない唾液を舐められ、唇をふさがれた。呼吸が苦しい。でもキスされていなければ、もっとみっともない声が出ていただろう。
ずぷ、と増やされた指に一気に奥を突かれて、腰が跳ねた。待ち望んだ刺激に、歓喜で震えた。
「んっん! んぶぅ」
漏れる声が遠い。一番弱いところを突かれて、縋るものもなく、助けを求めて舌を必至で絡める。また喉の奥で笑う音。はやく次が、欲しかった。
「ぷは、あぅ、んっ! も、やぁ、やらぁ・・・!」
「うん、そうだなぁ」
汗に濡れた髪が、ラグナの手で耳にかけられた。耳朶をくすぐり、スコール、と名前を吹きこまれる。
ようやくもらえると、期待に息を飲む。
焦らすように浅いところに熱が触れる。らぐなと回らない舌で何度も名前を呼んでみっともなく強請って、ようやくラグナの性器が埋められた。ず、ず、ともう慣らす必要なんてないのに、ゆっくりと出し入れしながら少しずつ、奥へと進んでいく。
もう少しで届く、というところまで来たのに、外れてしまいそうなほど出て行く。嫌々と首を振って見つめれば、ラグナの凶暴な笑みがあった。
「――――っ!!」
ずぷんっと水音を立てて、待ち望んだ一点が突かれる。声にならない。ホワイトアウトした意識の端で、嬌声が響く。耳を塞ぎたいけれど、ラグナに揺さぶられるだけのモノになっている俺には何もできない。
「あぁぁあぁっ! あ、ひゃっ! うぅん! あーっ!」
跡が残るくらい腰を強く掴まれて、いいところばかりを突かれる。どろどろになった性器に熱い手が触れて、先端に爪を立てられた瞬間、ラグナを締め付けて達していた。
「ひゃぁぁぁぁあ!」
息を飲む音。何度が突き入れられて、内壁を濡らされる。腰がしびれて、動けない。ゆっくりと抜かれるのですら刺激になって、小さく喘ぎ声が漏れた。
「はっ、はー・・・っ、ん」
「おつかれさん」
ちゅ、と額にキスして、ラグナがロープを外す。
「やっぱ擦れちゃったなぁ」
動きの鈍い身体を叱咤し、手首を見る。赤く擦れて、血がにじんでいた。
ラグナはぺろ、と傷跡を舐め、癒すかのようにちゅくちゅくと吸いつく。もう限界なのに、手首から伝わった熱が腹の底へ伝線しそうで、困る。
「次は脚も縛ってあげるから、早くおいで」
目を細めて微笑うラグナに、予定が変わって来週までいられると、いつ言おうか考えた。
喜んでくれるだろうか。明日、縛ってくれるだろうか。それともまた、焦らされるだろうか。シャワーも浴びなければと色々考えを巡らせていたはずなのに、おやすみと名前を呼ばれてキスが降るから、瞼が落ちてしまった。










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