・神楽耶嬢視点です。
・神楽耶嬢の性格だけでなく、スザクの婚約者という設定まで捏造しています。
・23話の予告のような雰囲気です。
・でも23話をまだ見ていません。
・あくまでも心の中はスザルル一色です。
・やっぱりルルーシュが好きなんです。(=スザクの扱いが以下略)







たくさんのひまわり、ヒマワリ、向日葵。
私の背もあなたの背もあの子の背もあの子どもの背も追い越して、太陽だけを見ているひまわり。
かくれんぼをしましたね。
見ていたのは私とあの子。
あの子どもが真っ先に見つけたのはあなた。
あなただけを探していたあの子ども。
見ていなかったのは、太陽だけを見ていたひまわり。

あの時、あの子と二人、泣き出しそうだったのと告げたら、困ってくれますか。
子どもだってわかるんですよ。
あなたの世界に誰が居るのか、誰が必要なのか。

必要とされているのか、いないのか。

あの時あのひまわりの中にはあなたとあの子どもしかいなかったんです。
あなたの世界にはあの子どもしかいらなくて、あの子どもの世界にもあなたしかいらなかったんです。
あの時、私は、あの子は。
見つけて欲しかったんです。私を、あの子を、あなたに。

鬼じゃなくて、あなたに。隠れている、あなたに。

隠れ鬼



私は、生まれてから死ぬまでの予定表を持って生まれました。
婚約者は時の総理大臣の長男。
知っていたのは私。知らずに友達付き合いをさせようと企む大人の汚さを知っていたのは、私。
抵抗なんてせずにただそれを受諾して、生まれてから死ぬまでの予定表を全うするのだと思っていたのに。
狂わせたのは、ブリタニア帝国からの人身御供。
生まれてから死ぬまでの予定表が狂ってしまった、あなた。

「はじめまして」
「はじめまして」
「はじめまして」
「ルルーシュです」
「ナナリーです」
「神楽耶と申します」

「あー……え〜っと、そうだ!かくれんぼしない?」
「ならスザクが鬼だ」
「えっもう!?」
「行こう、ナナリー、神楽耶。ひまわりの庭から出ちゃダメだよ」
「行きましょう、神楽耶さん」
「はい」

「いくよー。いーち、にーい」

鬼さん、鬼さん。見つけたらどうするの?




はじめてスザクがルルーシュと会った時、喧嘩をしたと聞きました。
敵国の皇子ですもの、仕方のない感情だと思います。
けれど私は不思議なことに、最初からルルーシュとナナリーを好きになりました。

とても、とても綺麗だったから。

惹かれたのは私だけではなくて、当然、スザクも次第に二人に惹かれていきました。
精一杯虚勢を張るルルーシュと、芯の強いナナリーに。

私は頻繁に枢木家を訪れるようになりました。周りの大人は、ブリタニアを懸念する一方でスザクと私が仲良くなればいいと、静観していました。
いえ、楽観視していたと言うべきでしょう。



カチ、カチャリ

「神楽耶。僕が憎くはないのか?」
「私が?ルルーシュを?」
「僕はブリタニアの人間だ」
「でもルルーシュはブリタニアが嫌いなのでしょう?私が、私の家が嫌いなのと同じように」
「同じかな?」
「同じものと変わらないものは世の中にはないんですって」

カチャ、ン

「いずれ日本はブリタニアに征服される」
「ルルーシュとナナリーがいるのに?」
「僕達がいるから、日本は油断している。僕達の価値なんて、ブリタニアにはないのに」
「でも私は日本でルルーシュに会えて嬉しいです」
「僕も日本は好きだよ」
「消えてしまうのでしょうか、日本は。いえ、日本という名前は、なくなってしまうのでしょうか」

カチャ

「じゃあ神楽耶。もし日本がなくなってしまったら、僕と一緒に作ろうか」

ジャララッ

「もう一回」

盤の上、もう一度私とルルーシュは将棋の駒を積み上げました。
あの時将棋を崩してしまったのは、どちらだったでしょう。
あの時もう一回と望んだのは、どちらだったでしょう。



スザクは将棋が苦手で、将棋で遊ぶのは大抵私とルルーシュでした。
スザクが好きなのは外で遊ぶこと。藤堂さんに鍛えられているスザクにとって、枢木の敷地内の山は全て、彼の庭と言って良いほど彼のものになっていました。
男の子は好きですよね、秘密基地。
当然女の子には内緒で、いくつかあるらしい秘密基地はスザクとルルーシュのものでした。
そして秘密基地から帰ってくると、大抵ルルーシュはあちこち傷を作って息を切らして、スザクは満面の笑みで夕食のメニューを聞くのです。
ルルーシュは傷口からかすかに香る血の匂いすらナナリーに気づかせないように必死で、汗をかいたからと真っ先にシャワーを浴びるのです。

スザクにとってルルーシュは何より特別だということを知っています。
誰にも言わなかった秘密基地を共有して、逃がしてしまった小鳥を捕まえてあげて、ブリタニアを憎む大人達の口汚い言葉が聞こえないように守って。
けれど、スザクは、いつもルルーシュを簡単に傷つける。

ルルーシュにとって、スザクがはじめてできた大切なお友達だということを知っています。
どんなにスザクが先を行っても追いかけて、傷だらけになっても泣き言一つわないで、そしてようやく振り返ったスザクが伸ばした手を必死で掴むのです。
きっと、その手の温もりがルルーシュにとって特別なものだから。

だからルルーシュはその温もりを逃さないように小さな傷をいくらでも隠してしまえるのでしょう。
そんなルルーシュを、ナナリーは何も気づかない振りをして癒すのでしょう。
私にできたことは、ルルーシュの傷口に良く効くお薬を塗ること。




あの、無力だった頃から7年経ちました。
大嫌いな家に伝わるお薬を塗ってあげてから、7年経ちました。

「桐原のお爺様、ゼロにお会いしたそうですね」
「これはこれは、お耳が早いですな」

御簾の中にいるのは私。御簾の外にいるのは桐原翁だけ。

「ルルーシュは元気でしたか?」
「……やはり、お気づきでしたか」
「ルルーシュのことですから」

元気でしたか?傷ついていませんでしたか?傷を隠していませんでしたか?

「あの者は、修羅の道を行く者です」
「そうですか。ルルーシュは覚悟を決めたのですね」

「では私は露払いを致しましょう」

例えそれがかつての婚約者であろうとも。
例え相手がブリタニア帝国であろうとも。

「ルルーシュとゼロは、私が味方します」




「ねぇスザク、スザクはルルーシュのことが好きですか?」
「当然だろ」
「一番に、好きですか?」
「一番?うー……ん。そうだな、一番好き」
「私もルルーシュが一番好きです」

「大好きなルルーシュ、傷つけないで下さいね」
「いつ僕がルルーシュを傷つけたんだよ」
「傷つけてないですか?」
「ないよ。ルルーシュはナナリーを守らなきゃいけないから、ルルーシュは僕が守るんだ」
「本当に?」
「本当だよ!」
「じゃあ、指きりしましょう?」
「いいよ。神楽耶もルルーシュいじめるなよ」
「あら、私はいじめたりなんてしませんわ。私だって、ルルーシュを守りたいんですもの」
「……それ、ルルーシュ聞いたら怒るぜ」
「知ってます。言っちゃダメですよ」
「まぁいいけど」

ゆびきり げんまん うそ ついたら はりせんぼん のーます

「指切った」




「一万回、ぐーで殴る体力をつけなきゃいけませんね。それから針を千本」

気づかなかったなんて言い訳は聞いてあげません。
スザクも傷ついてるかもしれませんが、そんなこと私は知しません。
だって約束破ったでしょう。
子どもの約束は単純で純粋で、その分残酷なんですよ。

でもそれより何よりも。
今すぐ駆けてゼロの隣に立ちたい。
盾はもういるのでしょうか。剣を手にしているのでしょうか。傷を癒す天使は無事なのでしょうか。
今すぐ駆けてルルーシュの隣に立ちたい。
大嫌いな家だって、あなたのためなら好きになれる。
見つけたんです、私のできること。私のあなたの守り方。
傷一つつけさせないなんて傲慢なことは言いません。もしもあなたが傷ついたなら、その時は。
あなたの傷は、私が治す。



鬼さん、鬼さん。
見いつけた。










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