※ ジノとスザクが別人。
※ そんな俺スザ+捏造ジノ→ゼロ(ルル)です。
※ でもルルは出てきません。そんな小話です。







ガラス越しの君


「ぜろ。ぜろ。ぜろ」
「…」
「ゼロ。ZERO」
「……」
「0。0に還る。0には何もかけられない。0からは」
「離せ」
「何もうまれない」

一人、また一人と去っていたラウンズの待機室には、ジノとスザクの二人だけが残っていた。
テーブルの上にはゼロのデータ。
黒の騎士団を背後に従えたゼロの写真が付されている。
それを目の前にし、スザクは座り心地の良い上等なソファに腰掛けていた。
ソファを挟んですぐ後ろにはジノがいて、その長身をかがめてスザクの首に腕をまわしていた。
耳元でジノの少し低めの声が響く。
断定にか、離せと言っても従わなかったことにか、スザクは焦れて騎士を振り払った。

「なァ、スザク。スザクはゼロを知ってるんだろ?」

振り払われた腕を気にすることなく、ジノは話しを続ける。

「ゼロって、どういう意味だと思う?」
「俺は、ゼロを捕まえてここまで連れてきただけだ。そんなことは知らない」
「でもさァ。ゼロとずゥっと一緒だったんだろ?」
「逃げられたら、困るから」
「ふーん?手柄を盗られたら困るから、とかじゃァないんだ」
「…」

頬が緩むのを隠しもせず、ジノはひらり、とソファを越えた。
沈黙するスザクの前に回りこみ、身をかがめて覗き込む。
口元には、笑み。

「なァ。ゼロってそんなにイイの?」

びゅっ

風を切る音。
スザクの右足が、風を切ってジノへと蹴りかかった。
座ったままで繰り出された蹴りはスピード、威力ともに普段のそれからは劣らざるをえず、自覚をしているスザクに苦い顔をさせるだけだった。

「怖いなァ。ごめんね、怒った?」

とんっ、と軽い音を立ててジノはテーブルの上に着地する。
足元にはゼロの写真。
無防備にも身体を半分に折って取り上げた。

「隠されるとさァ暴きたくなんない?」

例えばまず髪型。それから目の色。あァ肌の色も気になるよなー。イレブンだったら黄色人種ってことになるだろうけど、もしかしたら白色や黒色ってことだってありうるわけだし?あの仮面蒸れないのかなーとかも思う。映像見た限りだとほっそいよなァ。意外と女の子って可能性もあると思うんだけど、どォ?声は若い男ってカンジだったけどさァ。そんなのいくらだって変えられるし。まァでも年齢は若いよ。俺たちと同じくらい?うん。そんな気がする。まだ学生なんじゃない?あ、それイイな。昼は学生、夜はテロリスト。

テーブルの上、まるで演説でもするかのようにジノは滔々と語る。
ゼロの写真に目を落としているように見せながらも、スザクの動向を探ることは怠らないまま。

「ゼロを捕まえて、目の前に跪かせてさァ」

ジノはスザクに視線を向ける。探るように、何かを促すかのように。
けれどスザクの視線はジノには決して向かなかった。

「仮面を剥ぎ取ってナかせてみたくなった」

ピクっと肩が揺れたのを確認して、ジノはテーブルから降りた。

「皇女殿下殺害のテロリスト捕獲。ヤル気出てきたなァ。ね、スザク。オレ頑張っちゃうからさァ、ゼロについて、もっと教えてよ」

ジノにとって、ゼロとはいくら資料や映像で見せられてもなんの現実味もない存在だった。それこそテレビの世界の登場人物。資料や映像で歪まされた存在。
それがスザクに会って、その存在が、例えるならガラス越しにまで近づいた。
ジノにとって、ゼロという存在に現実味が沸いた瞬間。
けれどガラス越しではまだゼロが歪んで見える。
その感覚がジノは不満だった。

「自分の目で、確かめるんだな」
「そうだな。お楽しみは苦難があった方がイイっていうし。オレが捕まえて、仮面もマントも剥ぎ取ってやるさ」

楽しげにジノは笑う。その笑みには己への絶対的な自信が伺えた。
ゆらり、とスザクは立ち上がる。
ジノはそれを笑みを絶やさずに眺めていた。

視線が絡み合う。

「無駄だよ。ゼロを捕らえて、殺すのは、俺だから」

「さァ?それはまだ、わからないだろ」
「俺だ」
「やっぱり、ゼロってそんなムキになるほどイイもんなんだァ」



「楽しみ」










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