黒いリボンはサテン地で



「スザクくん、この間はお誕生日おめでとう」
「セシルさん!ありがとうございます」
「あは〜君誕生日だったんだぁ。歌でも歌ってあげようかぁ?」
「気持ちだけいただきます」

スザクはセシルの言葉には笑顔で返し、ロイドの笑顔はすぱんと切り捨てた。ざぁんねん、と唇を歪めて笑う上司はふらりとどこかへ立ち去った。

「お休み、ありがとうございました」
「いいのよ。普段学校休ませちゃっているんだから、折角のお誕生日くらい」
「おかげさまで、生徒会みんなでパーティするから絶対来るのよ!って会長命令に逆らわずにすみました」
「良かったわ」

「ところでセシルさん、後ろに見える、あの箱はなんですか?」

うふふ、と笑顔で会話するセシルの後ろに鎮座する、白い箱。黒いリボンがかけられているソレは、不自然に大きい。

「あら、気づいちゃった?」

驚かそうと思ったのに、と続けられるが、隠そうという意思が感じられない。
その箱を押し出すようにセシルはスザクに向ける。

「お誕生日おめでとう、スザクくん」
「え、僕に、ですか?」
「きっと喜んでくれると思うわ」

開けてみて?との言葉に従い、滑りの良いサテン地のリボンをしゅるりと解く。

まず目に入ったのは、真っ直ぐに流れる夜よりも暗い黒髪。日に当たらないのか白すぎる頬と首筋。意思の強さを伺える紫がかった両目は今は閉じられていて。先ほどまでスザク自身も着ていたアッシュフォード学園の制服が少し乱れている。

「…セシルさん?」
「お誕生日プレゼントは、やっぱり贈る人が好きなものじゃないとね」

拉致監禁、という言葉が頭の中をよぎったが、スザクは笑顔のセシルとくたりと力を失っているプレゼントを見比べ、まぁいいか、と判断した。
だってこれは自分へのプレゼントだし。

「ありがたくいただきます、セシルさん」
「もちろん今日はこのまま帰っていいわよ。明日もお昼からでいいから」

うふふ、と笑顔で言い放つセシルに、スザクは軽々とプレゼントを抱えあげて頭を下げた。










inserted by FC2 system