前夜祭



「今日は何の日?ふっふ〜♪」
「ご機嫌ですね、会長」
どこか懐かしいメロディに乗せて、ミレイが生徒会室に入ってくる。口元には笑み。やわらかく巻かれた金糸が揺れている。
生徒会室には副会長を除く全員が集っていた。いち早く反応したスザクが理由を尋ねるが、人差し指で「秘密」の合図。
「さぁカレン!今日は何の日!?」
「えぇ!?私ですか?」
指名を受ければ、書類に走らせていたペンを止めざるを得ない。
(何?何かあったかしら…。今日は4日、木曜日。ない、ないわ。まさか会長作の妙な記念日じゃないでしょうね)
思い当たるものもなく、視線は宙をさまようばかり。
その横顔をじっとシャーリーが見つめている。のを、他のメンバーは微笑ましげに眺めている。
「よかったわねーシャーリー。カレンは思い当たらないって」
「かかかか会長!?」
「会長?何かシャーリーに関係あるんですか?」
「んふー。じゃぁ正解はスザクから!」
「え?僕でいいんですか?」
真っ赤になって慌てるシャーリー、訝しげなカレン。ミレイはそんな二人の様子を満足げに見ては頷く。
では僭越ながら、と勿体ぶってスザクは咳払いまでしてみせる。

「今日は、ルルーシュの誕生日の前日です!」

ぱちぱちぱち、と拍手もつけて答え合わせ。
「はい正解!ということで、誕生日パーティの計画を立てます!!」
書類どけてどけて、と声が続く。皆心得たもので、テーブルはすぐに綺麗に片付けられた。その自然な様子から、これが恒例行事だということがわかる。
(17歳にもなって、誕生日パーティって…!)
小学生までにしておきなさいよ、という台詞はカレンの胸の中にしまわれた。この生徒会ならばありうると思い至ったからだ。そして、シャーリーが赤面する理由にも。
(私はルルーシュなんてなんとも思ってないのに!そりゃ、まぁ、最初はゼロかと思ったけど、ゼロとルルーシュは全然違うし!)
そういえば彼の誕生日を知らないと思った。そんな個人情報、彼が明かすはずはないのだけれど。知っていたら、何かプレゼントできるのだろうか。
「カレンさん?」
「あ、あぁ。ルルーシュの誕生日パーティの企画よね」
スザクの声で我に返り、慌てて意識を切り替える。
「いつもやってるの?」
「僕ははじめてだけど、そうなんじゃないかな」
「あぁそうよね。ごめんなさい」
ペースを取り戻せない自分に軽く舌打ちする。
(私はテロリストで彼は主!誕生日とか、プレゼントとか、そんな余裕はないのよ!落ち着けカレン!)
言い聞かせて深呼吸を一つ。隣のニーナに矛先を変える。
「去年はどうしたの?」
「誕生日パーティっていってもここでやるだけだからね、そんなに盛大じゃないよ。ミレイちゃんのケーキと、あとは軽く摘めるものでしょ、それでルルーシュくんにプレゼントを渡すの。生徒会メンバーのお誕生日会は毎年そんなカンジだよ」
「そうなの。じゃぁ何か用意しないとね」
「急でごめんね」
「いいえ。お祝いだもの。でも、何がいいかしら」
「すぐ手に入るものなら、コーヒーは?」
横からスザクの助言が入る。
「コーヒー?」
「ルルーシュ、朝はコーヒーだから」
「……詳しいのね」
とりあえず、シャーリーは自分よりも隣の男を敵視すべきだと何となく思った。
「ありがとう、探してみるわ」
「どういたしまして」

「カレン〜そろそろいいかしら?」
「あ、すみません」
「じゃぁはじめるわね。今回もいつも通り、放課後に開催します!これからリヴァルとスザクで買出し、私たちは部屋の飾り付けね。二人が戻ってきたらケーキを作るから」
「今日作るんですか?」
「寝かせた方がおいしいのよ」
「会長〜おつかいメモ下さいよ〜」
「はいはい、ショートケーキの材料ね。あとのお菓子は任せるわ」
「りょーかいっ!行こうぜスザク」
「うん」
ミレイの財布を受け取り、二人が席をたつ。
「ミレイちゃんのプレゼントはね、このお誕生日会なんだよ」
こそっとニーナがカレンに耳打ちする。材料費は全て会長の懐からでるらしい。
(私の誕生日もこうなるのかしら?)
ブリタニア人に祝われるのか、と思うのに、楽しみにしてしまう自分がいることにも気づいていた。
これも一種のモラトリアム。
「さぁ!はじめるわよ〜!!」
明日はお祝い。ケーキを作って飾り付けをして、彼が生まれてきたことに感謝を!










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