※ 高河ゆん『LOVELESS』のパロディ
ユフィ視点で基本的にスザクがユフィに惚気ていますが、偶にユフィがスザクに惚気ます。
スザ→←ルル:素直な美大生と素直になれない小学生。スザクが変態気味。
ネリユフィネリ:本気の恋と姉妹愛の一方通行両思い。お姉様が振り回されてます。







以心電信



こんにちは、ユフィです。美大生をやってます。
隣でケータイのカタログを開いているのは枢木スザクです。
機嫌が良すぎて気持ち悪いです。
というのも、以前までの彼は興味を持つ対象がないのか常につまらなそうな顔をしていて、それ故に機嫌が良いも悪いもない、死人みたいな人だったのです。
それでも描く絵は人を惹きつけるなんて詐欺ですね。そう、詐欺だと思うのです。
顔はいいし知識も豊富。料理だってできるし、お酒も飲まない。煙草は吸うけれど一応周囲への配慮もする。
そんなイイ男の顔で小学生を追い掛け回してるんですから!!
小学生が可哀想になってきます。だって、逃げられるわけ、ないでしょう。

ちろり、と見上げれば熱心にカタログに視線を落とす横顔。
メーカーはイルコム。特定の需要に応えるメーカーとして有名ですね。
「何?さっきから」
気づいていないと思いきや、流石に視線が能弁になりすぎていたようです。
「授業に集中して下さい」
そう、今は一応授業中なのです。
二人とも集中していないことを前提に言えば、落とされる苦笑。
聞いちゃダメ。でも聞きたい。
「ケータイ、替えるんですか?」
聞いてしまいました。やっぱり好奇心には勝てません。
私だって、これがドコデモやエイユウやバンクのカタログだったら聞きません。だけど、イルコムです。
答えが予想できているのに、聞きたい心理、わかっていただけますよね。
「もう1個、持つんだよ」
あぁやっぱり。
「買うのは1つだけですか?」
「わかってて聞くの?当然、ルルーシュのもだよ」
枢木スザクを変えた子の名前は、とても愛おしそうに囁かれた。
あぁやっぱり。
「ごちそうさまでした」
もうすぐお昼休みですが、今日はきっと少しだけしか入りません。
それから彼がしたことは?



「はい、ルルーシュ」
今日も窓の鍵はかかってなかった。嬉しくて頬は自然と緩む。
笑顔のまま、取り出したのは買ったばかりのケータイ。
「はぁ?」
はいって、なんだ。受け取れってことか。
疑問符を飛ばすルルーシュの姿が予想通りすぎて、可愛い。
「あげる。短縮の1番に、僕の番号が登録されてるから」
「はぁぁ!?」
「だって連絡とれないと不便でしょ?」
無理矢理、小さなその手に押し付けて。
「それじゃルルーシュ、またね。メールするから」
窓から身を投げ出せば、もうルルーシュは追って来れない。



「…それで、無理強いしてきたんですか」
「うん」
爽やかな笑顔に思わずため息が出てしまいます。
伝え聞くルルーシュの性格上、一端受け取ってしまったら、誰からもらったものであれ、きっと大切にしてしまうでしょう。
「それで?」
「その後すぐルルーシュから電話が来て怒られた」
「当然です」
正確には、混乱してたのでしょうが。
いきなりケータイをはいどうぞと渡されたら、驚くしかありません。加えて、料金はスザク持ちなのか、とか現実問題がやってきますし。
気にしなくていいんですよ、ルルーシュ。スザクが好きでやっていることですから。
「でも、ケータイはルルーシュのもののままなんでしょう?」
「当然」
自信満々ですか。
「ルルーシュが拒めるわけ、ないからね」
そうですか。
「それで、本当は何が言いたいんですか?」
「あれ?気づいてた?」
「当然です。ルルーシュ、どんな可愛いことしてくれたんですか?」
ケータイ押し付けただけで、ここまで顔がだらしなくなるわけありません。絶対、ルルーシュが何か可愛いことしでかしてくれちゃったはずです。
お腹いっぱいになるってわかってても、聞きたいことってありますよね。好奇心には逆らえません。
「それはね」



「何考えてるんだよお前は!?」
耳元で聴こえてくるルルーシュの声。
ケータイのいいところは、声がすぐ側で聞こえることだと思う。
悪いところは、実際は遠く離れていること。と、時折聞き取りづらくなるところ。
「ルルーシュのことだよ」
嘘じゃない。本当に、ルルーシュのことばかり考えてる。
言葉が詰まった、電話の向こうのルルーシュが見えなくて残念。
「っだから、そうじゃなくて」
「本当だよ。ルルーシュといつでも繋がりたいんだ」
君は信じてくれないかもしれないけれど。
「受け取って、くれるよね?」
嫌だなんて言わせない。
「…料金とか、どうするんだよ」
「僕が勝手にしたことだから、もちろん僕が払うよ?そんなこと、ルルーシュは心配しなくていいから」
「する!」
もしかして、子ども扱いされたと思ったかな?
「ちゃんと、大人、に、なったら返す」
「それって」
大人になるまでずっと一緒にいてくれるって思っていいのかな。
「返事は!?」
イエスマスター、って言ったら怒るかな。
「わかった、ルルーシュ。約束、ね」
だから代わりに約束を。



「可愛いよね、ルルーシュ」
話の途中で入れるのは、そんな惚気。
「スザク、今日のお昼、奢って下さいね」
「なんで」
「なんとなくです」
だってなんだか悔しいんですもの。最近お姉様はお忙しくて全然会えませんし。
「ユフィもお姉さんに電話すればいいのに」
「お仕事中だったらどうするんですか」
「出てくれるよ、絶対」
「…考えておきます。でも、お昼はスザクの驕りですからね」
「はいはい」
「はいは一回で結構です。はやく続きを教えて下さい」
「はい、オヒメサマ」



電話を切って、しばらく時間を置く。
一応置いてきたケータイの取説を読み終えただろう時間を見計らって、ささいな悪戯を仕掛けてみる。
どんな反応をしてくれる?

「ルルーシュ キスして」



「はぁぁぁぁ!?」
「どうした、リ・ブリタニア?」
教授の声に我に返れば、大教室に詰め掛けた学生の視線がつき刺さる。
思わず隣の男を睨みつけてから、申し訳なさそうな声をつくる。
「いっいえ、今取り掛かっている制作に、不手際があったことにふと気づいてしまったので。講義の邪魔をしてしまいすみませんでした」
「そうか、気をつけろよ」
「はい」
悪いのは絶対に隣のショタコンですっ。
笑いをかみ殺してますが、あなたに私をおかしそうに笑う資格なんてないんですからね。
「ユフィ、驚きすぎ」
周囲からの注目が消えた頃を見計らって言われるのはそんな言葉。
「驚きますよ。何恥ずかしいことしてるんですか」
セクハラですよ、セクハラ。
「恥ずかしいのはユフィでしょ?それに、セクハラにはなりません」
「誰のせいだと思ってるんです?確かに、セクハラは不適切かもしれませんが、雰囲気的には絶対に合ってます」
「ひどいなぁ」
非道なのはスザクです。
小学生相手に何言ってるんですか。しかも、メールで。
それなのにルルーシュがどうやって返したのかとってもとっても気になってしまうんです。ごめんなさい。
まだ見ぬルルーシュに謝罪して、続きを。
「それで、ルルーシュはどう返してきたんです?」
取り出されたケータイ。
何やら操作して、見せられた画面に映し出されたものは。


  From : ルルーシュ
  Subject : Re:
 ―――――――――――――――
  
  ちゅ
                           」



きゃぁぁぁぁぁっ!!
声に出さなかった自分を褒めてあげたいですっ。
「スザクっ」
語尾が跳ねて耳と尻尾が立ってしまいます。
「かっわいいでしょう!?」
ケータイを奪おうと手を伸ばせば、素早く折りたたまれてスザクの手の中。
別にルルーシュがそこにいるわけじゃないのに、ケチです。
「かわいすぎますっ何ですかこの反応!」
「ねずみみたいだよね!思わずメール来た瞬間笑っちゃったよ」
「ルルーシュは猫さんなのにねずみさんなんですね!」
あくまで授業中なので、トーンは控えめに。でも二人して大はしゃぎ。
ちょっと前までなら絶対にあり得ませんでした。こんな楽しいこと。
「でもさ、ルルーシュがどうやって返そうか悩んで、ケータイにちゅってしてから、やっぱりメールでちゅって打ったのかもって考えると」
「―――っ!!」
思わず机に突っ伏してしまいます。
スザクをここまで夢中にさせて、その上こんな可愛い行動をしてくれそうだなんて、実物にお会いしてみたくて仕方ありません。
と、思うぐらいなら十分正常な思考の範囲内だと思うのですが、やはり隣の男は一般人とはほど遠い思考回路をしていました。
「やっぱり監視カメラとかつけるべきかなぁ」
ボソりと何聞き捨てならないこと言ってるんですかこの変態。
感情表現豊かになったことは喜ばしいことですが、ルルーシュのためにはこの男は警察に突き出した方がいいかもしれません。

ケータイでこの男の危なさが1ミリでも伝わればいいのに!
残念なことに、甘くて優しい、ちょっと毒のあるココロしか伝わっていない模様です。










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