※ 高河ゆん『LOVELESS』のパロディ
ユフィ視点で基本的にスザクがユフィに惚気ていますが、偶にユフィがスザクに惚気ます。
スザ→←ルル:素直な美大生と素直になれない小学生。スザクが変態気味。
ネリユフィネリ:本気の恋と姉妹愛の一方通行両思い。お姉様が振り回されてます。
今回はネリユフィネリのみ。







1ミリの感謝



「お仕事中でもなんでも、ユフィが電話したらお姉さんは出てくれるよ」
スザクに言われた言葉を気にしているわけじゃありません。
「キスして」
なんてそんなスザクみたいな真似できるわけありません。
それなのに、なのに。
「なんでこんなに気になってしまうんでしょう」
目の前にはお姉様とお揃いのストラップが揺れるケータイ。

たとえば、もう3日も顔を合わせていないとか。
たとえば、もう5日も食事を共にしていないとか。
たとえば、もう1週間も一緒に寝ていないとか。

思い出してしまうと、ダメなのです。
しかも、学校でスザクに散々惚気られた後で。
思い出してしまうと、ケータイを見つめることしかできません。

電話をかけてみる?
ダメです。事故に巻き込まれたとか、きっとそんな見当違いな内容だと勘違いされてお姉様に心配をかけるだけです。それに、お仕事の邪魔になりすぎてしまいます。
メールを送る?
なんて送ればいいのでしょう。お仕事お疲れ様です?今日も遅いのですか?
ダメです。そんなこと、ダメです。

「うにゃぁ」
しょぼんと垂れた耳と尻尾。
手入れを欠かすことはありません。
だってこの真っ白な二つはお姉様のお気に入りだから。

「どうしましょう」
どうしましょう。本当に。
だって思いついてしまったのが、スザクの行動を真似することなんですもの。

パっ
小気味良い音を立てて開く二つ折りのケータイ。
「先に寝ていろ」
お姉様からのメール。
機能・返信。新規入力。
「お姉様 キスして下さい」
じぃっと見つめる文面。
「―――っ!!」
恥ずかしすぎます!真顔で送ったんですかあの男は!?本当に本当にルルーシュ馬鹿すぎます!!
消去です消去っ。
こんなの、私らしくありません。

「メールを送信しました」

消去ボタンを押したはずの画面は、私の思惑とは裏腹に送信終了の文字が並んでいました。
「嘘!?」
送信済みメールを調べれば、私が打った、送るはずの無い、恥ずかしい文面。
嘘。
本当は、送ってしまおうと思ってました。
だってお姉様は本当に最近お忙しいから。
お姉様が悪いのではありませんが、だって寂しいんです。
きっとこんなメールが来たら困るでしょう?やつあたり、したことにしておきます。

それでもずっとケータイから目が離せないのですけれど。
ルルーシュみたいな可愛い返信なんて期待してません。でも、電話でも、メールでも、何でもいいから欲しいんです。
お仕事の邪魔をしたいわけではないのに、お仕事にやきもちを妬いたって仕方ないのに。
それでも少しだけでもいいから、ユフィを優先して欲しいんです。



「うわーユフィってやっぱり甘やかされてるよねぇ」
入れられた合いの手は、否定できないだけに不愉快です。
「どういう意味ですか」
「正直な感想だけど?」
「ここは、お姉さんはどういう反応返してきたの?って聞くところです!」
「えー?だってわかるし」
「何でですか!?」
「耳と尻尾の艶が昨日と全然違う。服も気合入ってるし、ものすごく機嫌いいし、良いコトあったって言ってるようなものだよ」
「だから、どんな反応かはわからないでしょう?」
「わかるよ」
わかるとスザクは繰り返す。
どうしてでしょう。
「お姉さんはね、君が連絡来ないのを不安に思ってる間、連絡する間すら惜しんでずっと仕事を片付けて、それで君に会いに帰ったんだよ」
「なんで、わかるんですか」
そう、その通りです。
連絡がなくて、やっぱりあんな馬鹿なことしなければ良かったって思って、あんな馬鹿なメールにも一生懸命考えて返信してくれたルルーシュがいるスザクが羨ましくなって、とっても醜い子になっていたんです。
お姉様が、どんな気持ちであのメールを読んだかなんて考えないで。
それなのに、なんでスザクはわかるんでしょう。
「簡単なことだよ。僕はルルーシュからそんなメールが来たら、出来るだけ早くルルーシュのところに行くからね。でもお姉さんの場合、そうも行かないでしょ?仕事を放り出してきたら絶対ユフィは怒るだろうし。だから、仕事を急いで片付けて駆けつけるしか、ないんだよ」
そう、その通りです。
連絡が来ないのが悲しくてちょっと泣いてしまって、突然乱暴に開けられた玄関の音に驚いて涙を拭うのも忘れて様子を見に行ったんです。
そこにいたのは、息を切らせたお姉様でした。
こんな時間に、家に戻れるわけないのに。

「ただいま、ユフィ。遅くなってすまない」
キスは、直接泣いた目の端と額にもらいました。



「目元と、おでこたけ?」
「そうですが?」
「それで、その後ご飯を食べてお風呂に入って一緒に寝たの?」
「当然です」
「それ、だけ?」
「それだけですけど?」
何がいいたいんでしょう?
「あー…お姉さんって、本当に、君を大事にしてるよね」
「私もお姉様が大事ですよ」
いやそういう意味じゃなくてね、でもまぁ僕もルルーシュ相手なら。
などとよくわからないことを漏らす男はこの際無視です。
幸せが逃げていってしまいます。
折角、普段惚気話を聞かされてる分お返ししようと思ったのに。期待していた反応より薄くて悔しいです。

でも、昨日お姉様と一緒に過ごせたのはスザクのおかげもあるかもしれないから。
1ミリぐらいだったら、感謝してさしあげますっ。










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