※ 津山ちなみ『HIGH SCORE』と天野明『家庭教師ヒットマン リボーン』のパロディ
雲雀さん風なルルーシュと常盤津風なマオ。







コンティニューで狙うはハイスコア



並盛中学の正門には人だかりができていた。
正確には、とある人物を中心として半径1m以内に立ち入らずに校門を通ろうとする生徒達で、渋滞が出来ていたと言うべきか。
そんな生徒達に取られる距離と逸らされる視線に頓着せず、問題の中心は楽しげにヘッドホンから流れる曲に身を委ねていた。
彼は並盛中学の生徒ではなかった。違う制服を身につけ、いかにも人を待っています、という風体だが、サングラスで隠した視線は一度も学校の方へは向けられない。その代わり、長身を姿勢悪く曲げながら、ケータイをずっといじっている。
彼のケータイは、ここに立ってから一度も鳴りもしなければ震えもしないにも関わらず。
それでも彼はずっと楽しそうに笑顔を浮かべていた。

ざわり、と人垣が、揺れた。
その空気を蓋をした耳でなく感覚で知った彼は、寄りかかっていた校門から、緩やかに身を起こした。
「遅いよ〜ルルーシュ」
「こんなところで何やってる、マオ。お前は別の学校だろう」
ルルーシュ、と呼ばれた学生は、ブレザーの制服の中、一人だけ黒の学ランを羽織っていた。左腕の腕章には、燦爛と輝く『風紀』の文字。
並盛中学で一番の権力を誇る、風紀委員長、ルルーシュ・ランペルージその人である。
美貌の優等生で誰もが崇拝する彼は、その実、力ではなく情報と策略でその地位を不動のものとし、並盛一帯の総元締めとして君臨する王でもある。
マオと呼ばれた他校生はというと、黒耀中学で一番の問題児、である。
傍目から見ると接点が全く無いこの二人。その関係は。
「ボク学校に友達いないもん。ルルーシュ遊んでよ」
今日も勝つよ、と絆創膏を貼った頬を上げて笑ってみせる。
誰も近づく猛者のいないマオが、唯一笑顔で話せる相手がルルーシュ。持て余す力を振るう相手はもちろん。
「今日見回りに行くのは、黒耀関連だぞ?」
「いいよ〜。ルルが言うなら、誰が相手でも」
「それよりも、お前自分の学校なんだから自分でまとめろよ」
「やだよ。ルルがいるから楽しいんだもん。ボク一人でなんでそんなことしなきゃいけないの?」
歩きだすルルーシュにじゃれつくマオ。
「最近、黒耀が煩い。風紀が乱れすぎだ」
「あ〜なんかね、ボクの名前使ってるヤツがいるみたい。さっき知らないヤツに絡まれたもん」
もちろん伸しちゃったけど、とまた笑顔。
暴力沙汰はマオにとっては日常茶飯事。
「調べはついている」
「あ、もしかして、ボクのためだったりする〜?」
「馬鹿か」
「あはは。わかってるよ〜。みんなみんな、ナナリーのためだよねぇ」
ルルーシュの大切な唯一の家族は目も見えず足も不自由だ。彼がこのあたり一帯の風紀を正したいのは、彼女が安心して出歩けることを望むから。
「でもボクのためもちょっとあるでしょ」
「…ぐだぐだ言うなら、遊んでやらないぞ」
「ごめんごめん。わかったよ、ルル」
まっすぐと歩くルルーシュと、その周りをうろちょろと落ち着きなく動くマオ。
一見、普通の学生にからむ不良のような光景。
けれど実際は。

「お前が“マオ”か?」
マオとは似ても似つかない“マオ”はお楽しみの真っ最中。
泣きそうな並盛中の制服とそれを囲む黒耀の制服。
「奇遇だね〜。ボクもマオっていうんだよ。ねぇ、どっちがホンモノか試してみる?」
涙目の学生が、風紀委員長、とか細く呟いた。
とりかこむ男達が、黒耀の死神と並盛の風紀委員長を知らないわけがない。
「うまそうな群れだな。とっとと咬み殺してしまえよ、マオ」
ひぃ、と情けなく息を呑む制服に、ルルーシュは笑ってそう言った。










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