伸ばした手の行方
私がお兄様に右手を伸ばすと、お兄様は私の手を握ってくれます。
私がお兄様に左手を伸ばすと、お兄様は私の手を握ってくれます。
私がお兄様に両手を伸ばすと、お兄様は私を抱き上げてくれます。
では、お兄様の伸ばした手は?
私はお兄様にとって守るべき存在だから、お兄様は私に手を伸ばしてはくれないのです。
小さな頃は、お母様がいました。
でもその後は。
その後は、お兄様は誰にも手を伸ばしませんでした。
日本に行くまでは。
日本で見つけたのは、お兄様が手を伸ばせるただ一人の人。
お兄様が手を伸ばすのは、きっと、スザクさんだけなんだと思っていました。
信じていたのです。
私が伸ばした手はお兄様が、お兄様が伸ばした手はスザクさんが、そうしてまぁるい世界ができると、信じていたのです。
私は見ることは出来ませんでしたが、世界のおしまいはあっと言う間でした。
ひまわりは焼けてしまいました。
お兄様は、手を、離したのだと思います。
だからきっと、私もお兄様に手を伸ばせなくなる日がくるんだと思っていました。
でもそれは、いつか、だと思っていました。
先延ばしにしたくて逃げたのは私の罪。
けれどいつから歯車が違ってしまったのか、私にはもうわからないんです。
優しい腕で守ってくれたお母様は死んでしまいました。
それでも日本でお兄様が笑ってくれるようになって、私はとても幸せでした。
けれど今スピーカーから聞こえるのは悲しいニュースばかり。
教えて下さい、スザクさん。
何が間違っているのですか?
私とお兄様は生きていてはいけないのですか?
教えて下さい、お願いです。