宅配ピザへの注文はマルゲリータ。
香ばしい匂いが好ましい。
ルルーシュは学校。C.C.は上機嫌でピザを一口。
シールが集まるまであと少し。

そんな日常を破ったのは、扉を叩く音。
「C.C.さん。お邪魔してもよろしいですか?」
躊躇う間もなく開く扉。
悪いなルルーシュ。
C.C.は開き直ることに、決めた。


花の誇り



主のいないルルーシュの部屋には、C.C.とナナリー。
「どうしたんだ?」
わざわざ尋ねるのは、己の王の大切なモノだから。
「C.C.さんに、お聞きしたいことがありまして」
テーブルの上にはピザと紙パックの紅茶。
「私、お兄様がどんな姿をしていても見つけられる自信があるんです」
「たとえ声を変えていてもどんな遠くからでも、声を聞けば手に触れれば、絶対にお兄様を見つけられます」
ほう、とC.C.は目を細める。
「私は見ることを放棄しました。歩くことはできません。私は、お兄様の枷でしかありません」
枷。そう、まさしく枷なのだろう。
「あぁその通りだな。お前がいなければきっともっとルルーシュは」
自分を省みずに血を流す。

囁いた言葉に、しかしナナリーは驚いたように口を開いた。
「何を驚くことがある?お前がいるからこそ、ルルーシュはここにいるんだろう。お前がいなければ、相打ち覚悟で父親なりテロリストを騙るヤツらを殺してるだろうよ」
「…ありがとう、ございます」
「私は私が感じた事実を言ったまでだ。それで?」
私に聞きたいことは、なんだ。

「お兄様の正体が明るみになった時、きっとお兄様はどうにでもなりますが、きっと私は捕まります」
私を人質にすれば、お兄様は私を何よりも優先してくださいますから。
「大層な自信だな」
「はい。でも否定はなさらないんですね」
「あぁ。事実だからな」
ですから、とナナリーは続ける。
「その時の覚悟はいつだってしているんです。でもそれまでは、私はお兄様が望むままに幸せな世界にいたいと思います」
ルルーシュの望む幸せな世界。
綺麗なものだけ揃えて赤いものも黒いものも何も見せずに、真綿で包んで?
「それでお前は幸せなのか」
尋ねた言葉は、特に彼女を気遣ったものではなく純粋な疑問。
「お兄様が私の幸せを願ってくれているから、幸せです。私が眠るまでそばにいてくれて、一緒にいる時間は減ってしまいましたが、それでもお兄様は私を抱き上げてくれますから」
私が笑っていれば、お兄様も笑ってくれる。幸せですよ幸せなんです。
「だから、C.C.さんにお聞きしたかったことは」

「あなたはお兄様を守ってくれますか」

大切な大切なたった一人きりの兄。
尋ねたのは、これで二人目。

「私とルルーシュは契約を交わした。あいつは私を必要だと言った。だから、守るさ」

答えをくれたのも二人目。
答えをわかっていて尋ねるのは卑怯だろうか。
それでも声に出して誓ってほしい。
跪いてくれなくていいから。

「ありがとうございます。私にはお兄様を守る力はないから、だから、お願いします」
「私は私の意志であいつを守るんだ。礼を言われる筋合いも、頼まれるいわれもないな」
「はい。それでも、ありがとうございます」

「私はここで、お兄様をいつだって笑顔で迎えて送り出しますから」










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