(おまけ)


「……なに膨れてるんです」
「だっておまえ、私服ないとか言うから」
「ないですよ」
「王さまあげたじゃん!」
「外交用とか視察用とかじゃないですか」
「そう言わないと受け取らないからだろおまえ!なんだよ昔は俺の買ってきた服しか着なかったくせに!」
「官服だってそうでしょうが」
「そんな模範解答はいりません!」
「…もういいじゃないですか、今日買っていただきましたし」
「おまえさー私服って意味わかる?仕事じゃない日に着るんだよ?」
「えぇもちろんですとも。存じておりますよ」
「着ろよ」
「機会があれば」
「休みだっつったのにもう官服だし」
「王が机に向かっているというのに、休むなんて勿体ない。それに―――」
「それに?」
「…………あんたがいないのに、どこ行けっつーんだよ」
ガタッ







行き詰っていた実験が、昨夜から放置していた薬剤からできた結晶で進みそうなんです、とお礼と報告をしに来たのだけれど、やめておこう。
巻物を三つ抱えたジャーファルさんの部下の女性と顔を見合わせ、示し合わせたわけでもないのにお互いにこりと笑う。
「急ぎではないので」
「私も、まだ日が先のものですので」
ジャーファルさんは色々心配しすぎなのだ。まぁ、王がおおらかすぎるからバランスは取れているのだけれど。それでも時には、ちゃんと話し合った方が色々上手くいくと思ってしまう。
王も変に遠慮するから良くないのだ。
どうせ官服を着ていても私服を着ていても、ジャーファルさんの一番が王であることに変わりはないのだから。はやく認めてしまえばいいのに。

「ヤムライハ様は今日はお休みだったのでは?」
「えぇ。ただ実験の進捗だけ報告しようかと思って」
「そうでしたか。先ほどから思っていたのですが、素敵なお召し物ですね」
「ありがとう。気に入っているから、そう言ってもらえて嬉しいわ」
ジャーファルさんに買ってもらったの!と自慢したいけれど、子どもっぽいから我慢した。
「それでは、よい休暇を」
「ありがとう、では失礼しますね」
新しい私服を着たジャーファルさんが見れますよう、どうか今日は一日、何事もなく終わりますように!





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