※ この物語はフィクションです
※ 現パロでラグナ×スコール(女体化)本です
※ ティーダとヴァンも女体化しています
※ ラグナとスコールの年齢差と関係はFF8がベースです
※ FF8の設定も多数出てくるため、未プレイの方はご注意ください



行き止まりの恋


(冒頭)

17歳、花も恥らう女子高生が、40代男性とお付き合いしていると聞かされたら。犯罪じゃないのかとかロリコンだとか言ってもいいと思う。少なくともティーダの頭にまず浮かんだのはその二つだ。
賢明にも口を閉ざしたのは、普段の海の底のように涼しげな青い瞳がうろうろと彷徨う様や、滅多に緩むことのない頬が紅潮したり、肩から胸へと流れた髪を所在なさげにいじる指が可哀想だったからに他ならない。
蝉の鳴く声がやけにうるさい。夕方になってもまだアスファルトから立ち上がる熱気で視界が揺らぎそうだ。
何を言えばいいのか、頭の中を必死に探すけれど、スコールの視線を捕えられるような言葉は何も浮かばなかった。少なくとも、ティーダには。
「え、なにそれ相手ロリコン?」
バシンッ
「いてっ」
「オマエ、オレの努力をなんだと思ってんだ」
飛び出したヴァンの声に、口より先に手が出てしまったのは致しかたない。ヴァンを打ったティーダの手もヒリヒリと熱を持っているが、下を向いてしまったスコールの気持ちを考えればなんてことはない。
「じゃー騙され――」
「ヴァン」
「……いや、いいんだ。やっぱりそう思うよな」
変なことを言って悪かったと、小さく告げて背を向ける。気づけば丁度それぞれの家への分かれ道まで歩いていて、スコールが狙って告白したのだと気づく。
「ちょっと待てって!」
慌ててティーダが伸ばした手はなんとかスコールの腕に届いた。
「離せ」
「……っと、マック!ヴァンのおごりで!」
「あ、そういや昨日クーポンもらった!行こうぜスコール。おごんないけど」
いつものように溜息の後、好きにしろなんてスコールは言わなかった。帰りたそうで、それでも振り払われないのをいいことに、ティーダは手を引いて歩き出す。
スコールの日に焼けづらい白い手はやけに冷たかった。



クォーターパウンダーセットに爽健美茶とチキンフィレオセットにコーラ、それと単品で爽健美茶のSサイズ。
席で待っていればトレーにごちゃごちゃと乗せてヴァンが向かってくる。
「サンキュ」
「700円でいーよ」
「値上げすんなよ!」
「じゃあ650」
負けたティーダは財布から小銭を取り出した。
受け取って笑むヴァンは、スカート丈を気にせずどさりと腰掛け足を組むが、めくれたスカートはスコールが指先で整えた。いつものように、仕方なさそうに。
それに気づいたヴァンはにっと笑って、スコールの分の飲み物を渡す。
独特の太さのストローを大人しく咥えるスコールを、なぜだか二人して見守って、いただきますと手を合わせる。
「あ、チキン味変わった?」
「最近クォーターパウンダーばっかだから忘れた」
「リッチじゃん!」
ヴァンの革靴がティーダの紺のソックスを軽く蹴る。お返しにと、なかなか足を閉じて座る癖のつかないふくらはぎを蹴り返した。
ポテトをトレーにあけて、スコールにもおすそ分け。勧められれば手を伸ばすけれど、今日の塩多めなポテトを文句も言わずに食べているあたり、いつも通りにはまだ及ばないようだ。
塩気が強いとか油が多いとか太るぞだとか、二人はスコールの小言が聞きたかったのだけれど。
ティーダはざく切りのタマネギとピクルスをパティと一緒に咀嚼しながら、スコールの告白をもう一度考える。
ずず、と残り少なくなっていた容量にストローが音を立てた。
始めは良かったのだ。付き合っている人がいると、堅苦しく切りだされた。スコールに彼氏!?だなんて二人してはしゃいで、どこで知り合ったのかとか、いくつなのかとか、いつからなのかとか。学校の廊下やら教室の隅で交わされている、くだらないと思っていたオンナノコの会話と同じことを聞いていた。
スコールが答えたのは、年齢だけだった。
44、5歳。探せば同じ年齢の親子がいそうな年齢差である。
(マジかよーって、思うだろ)
ストローを咥えながら向かいに座るスコールを窺えば、緩慢な仕草でポテトを一つ摘まんでいた。ヴァンもその様子を目で追っていて、手元が留守になっている。
(ヴァンのレタスが落ちそうッスよー)
案の定、適当に持った包み紙の間からマヨネーズを乗せたレタスがひとつ、零れ落ちた。
「なースコール。レタス落ちた」
「そうか」
視線を上げもしないスコールにヴァンが苛立つのがわかる。
「そうかじゃないって。もっと気にしろよ。いつも先に教えてくれるだろ。もっとちゃんと俺のこと見ろよ」
口を尖らせて不機嫌だとあからさまに声音に乗せて、そこでようやくスコールは顔を上げる。
ひどい顔だ。道に迷った子どもだってもう少しマシな顔ができるだろうに、それよりもなお痛ましい。
「別にスコールが誰好きでもいいけどさ、こっちも見ろよ」
先ほどのように、背を向けてどこかに行かれてしまっては、寂しすぎる。
睨みつけるかのように強い視線。このテーブルだけ周りから切り離されたかのように静かだ。
スコールの告白の上手な受け止め方はわからない。
けれど、普通ならば喜んで知らせるようなことを、こんな痛ましそうな顔で告げさせるような男に取られるのは、癪だ。
「そうッスよ。スコールがなに心配してるのか知らないけど、ヴァンが制服汚して怒られる方が大変だって」
「それともスコールは彼氏できたら俺らとマックにも行けないのかよ」
「そうだそうだー!オレ今度試合あるし、今日の補習で出された英語の課題終わってないし」
「はくじょうものー」
あと何を言えばスコールが呆れた顔して笑ってくれるか考えていたけれど、言葉にする前に馬鹿か、と小さく返された。
落ちた前髪の合間から見えるスコールの顔はまだ不細工で、クールビューティーだなんて後輩にもてはやされている先輩の顔はどこにもなかったけれど、固まった頬は少し、緩んでいた。
「試合、彼氏連れてきてもいーよ」
「うん、見たい。てか見せろ」
今まで彼氏のいなかったスコールの初めての相手だ。しかも一回り以上、年の離れた男。見たいと言うより、その面拝んで一発入れたいというのが本音だ。
「……無理だ」
そんな思いが漏れ出たわけでもあるまいが、またスコールは俯いて否という。
「なんで」
「どうして」
「忙しいから」
「嘘だろ」
「あぁ」
やけに早い返答に反射的に嘘だとティーダが返せば、あっさりと認められた。
すぅ、と深く息を吸って、ティーダとヴァンを順番に見る。
スコールの向かいに二人並んで座れば良かったなんて今更思った。付き合っているという告白よりも大事なことを、きっと言おうとしている。

「本当は、有名人だから」



(中盤)

カチャリ
 ドアの開く音と同時に響く、バタバタと忙しない足音に我にかえる。
「たっだいまースコールぅ」
「おかえり、ラグナ」
 母を亡くしてから久しく使っていなかった言葉を、ここに来れば言うことができる。くすぐったさを感じながら、大事に言った。
 両手を広げて飛びつくラグナに逆らうことなく、ハグを受ける。
「疲れたよ〜」
「はいはい、お疲れさま」
一回り以上年上のくせに、子どものような言い方をする。これが似合ってしまうからいけないのだと思う。見た目も実年齢に比べ低く見られがちだが、それ以上に言動がラグナを幼く見せる。
 乱れた髪を労わるように梳いてやれば、額の傷に口づけが落とされる。何度も、何度も。
「夕飯、作るか?」
ラグナの胸元にあたる胸が今日に限って恥ずかしくて、まだ早い時間なのにそう聞いてしまった。
「ん?ん〜お願いしようかな」
にっこり笑って、スコールと同じ色の瞳が優しく揺れる。ぽん、と頭に手を置かれて撫でられる。
自分から離れるように仕向けた癖に、いざそうなると名残惜しくなった。
(馬鹿か)
自分をなじって、立ち上がった。
すらりと伸びた細い脚がラグナの眼前に晒されるが、スコールは気づかずスカートを翻す。日に焼けづらい白い脚とひらひら揺れるプリーツは大層目の毒だったが、苦笑するラグナよりも今日の献立の方がスコールには大事だった。
 花柄がプリントされたエプロンはいつの間にかラグナが準備していたもので、自分に似合っているのかと疑問に思いながらいつも着けている。白い制服にソースが跳ねたら面倒だからと言い訳しながら。
 冷蔵庫を開けて、今日のメニューであるハンバーグのための材料を取り出していく。付けあわせはポテトにした。にんじんのグラッセは甘いのが嫌いだということを知ったから、変えてみたのだ。
コーンスープは市販のものに生クリームを加える簡単なものにしてしまったが、許してもらおう。バケットとサラダはホテルのレストランで販売しているものが美味しいと聞いたので買ってみた。
一人で食べる食事は作っているうちに満腹になった気がしていつも味気なくなってしまうが、誰かのために作るのは、楽しい。
ジュージューと食欲をそそる音と香りを立てるフライパンを動かしていると視線を感じた。
先にシャワーを浴びてきたらしい、ラグナが肩にタオルをかけたまま、壁に寄り掛かってスコールを見つめている。










inserted by FC2 system